紛争の内容
相談者は小規模会社の社長であり、元従業員から残業代請求をされたがどうしたらよいかということでご相談にいらっしゃいました。もっとも、元従業員には弁護士が就いておらず、請求内容が整理されていない状況でした。

交渉・調停・訴訟等の経過
相談者の会社では、タイムカードによる労働時間管理をしていませんでした。そして、元従業員は、独自に作成した信憑性に欠ける労働時間を主張してきました。
このまま裁判等で争った場合、元従業員の主張は証拠資料に乏しいために認められない可能性もありました。しかし、訴訟で争っていくとなると、年単位での解決期間がかかること、万一適切な証拠資料が見つかった場合には、一定金額を払うおそれがあること、裁判所がどのように判断するか分からないこと、といったリスクが山積していました。
そこで、弁護士から元従業員に直接連絡し、残念ながら元従業員の主張が認められる見込みが少ないこと、金額的に大きくはならないけれども、月給分の解決金を支払うことを提案し、振り上げた拳をどうにか下ろしてもらうべく交渉をしました。

本事例の結末
数時間レベルに及ぶ丁寧な交渉をした結果、弁護士の言っていることが嘘ではないこと、相手方とはいえども紳士的に親身に話を聞いたことで一定の信頼関係を構築することができ、弁護士の思い描いた解決をすることができました。

本事例に学ぶこと
本件は、10歩先を見通したとき、相談者である会社の主張が認められる可能性が高い事案でした。しかし、裁判所で訴訟手続きの中で解決するとなると、長期間がかかり、弁護士費用もふくらみ、裁判官がどのような判断をするか必ずしも分からないという懸念がありました。そこで、先を見通して、相手方の体面を考え、結果的に依頼者である会社の損害を最小限にとどめることができました。

弁護士 平栗丈嗣