紛争の内容
解体業を営む会社からご依頼を頂き、解体作業員であった元従業員の方からの残業代請求に対する交渉を行いました。この交渉では、元従業員の方にも弁護士がついています。
元従業員の方の弁護士は、朝、会社に出勤した後、会社の車で作業現場に向かうという勤務を行っていたのですが、朝の出勤時間から賃金の発生するような労働を行っていると主張し、350万円を請求してきました。
これに対して、当方は、賃金が発生するような労働を行っていたのは、現場に到着した後からであって、朝の会社から現場までの移動時間は労働時間から除外すべきであると主張し、支払うべき残業代は260万円であると主張しました。

交渉・調停・訴訟などの経過
裁判例を参照しますと、朝の移動時間を労働時間から除外すべきか否かは、会朝の集合時間や現場までの移動方法を、会社が従業員へ指示した否かによって決まるようでした。
そして、元従業員の方のタイムカードを見ますと、タイムカードを朝に押していない日が、70日近くございましたので、必ずしも毎日、朝、会社に出勤してから会社の車に乗って現場へ移動していたわけではないようでした。
さらに、会社に聞き取りをしても、朝の集合時間や現場までの移動手段を、元従業員の方に指示したことはないとのことでしたので、タイムカードの件と併せて先方の弁護士にお伝えしました。

本事例の結末
元従業員の方の弁護士は、移動時間を労働時間から除外して計算した260万円という金額で和解すると回答し、無事に和解が成立しました。

本事例に学ぶこと
移動時間を労働時間から除外すべきという裁判例を学習し、さらに、その裁判例を実際の事件で生かすために、会社が集合時間と移動手段を従業員に指示しなかったという事実をタイムカードによって立証する方法を学びました。

弁護士 村本 拓哉