事案の概要
運営する施設の管理人として、雇用期間1年の有期雇用従業員を雇っていたが、初回の更新の後、従業員の安全面を主眼に以前から検討されていた施設管理の外部移管が決定されたため、同従業員については次回の更新を行わず、雇用期間満了に伴う雇用関係終了としたところ、同従業員から、雇止めは無効であり継続就労を求める旨を記載した書面が届いたという事案でした。
交渉・審判の経緯
お話を聞かせていただき、書面対応の段階から受任いたしましたが、会社側として、施設管理の外部移管の必要性が高かったこと及び元従業員の雇用期間満了に伴い代替職種を提案したこと等の事情が存在したことから、元従業員の要求には一切応じられない旨の回答を行いました。
そうしたところ、元従業員は、雇止めは無効であるため自身が現在も従業員たる地位を有することの確認及び従業員たる地位に基づく賃金請求を内容とする、労働審判手続の申立てを行いました。
労働審判期日において、労働審判委員会に対して上記の事情を説明し、元従業員の言い分には理由がない旨を主張しました。労働審判委員会からは雇用期間満了に先立つ会社側の説明が不十分であったのではないかとして和解に応じるよう説得を受けましたが、元従業員との間で和解条件が折り合わなかったため、労働審判委員会による審判が下されました。
本事例の結末
審判内容は、会社側は元従業員に対して30万円を支払え、その他の元従業員の請求は認めない、というものでした。
元従業員の請求を認める審判ではなかったため、会社側として異議を出すことはしませんでした。元従業員も異議を出さずに審判が確定したため、審判で命じられた金員を元従業員に支払うことで本件は終了となりました。
本事例から学ぶこと
労働審判手続は、労使間の紛争を原則的に3回の期日で解決しようとするものですので、大まかな事実認定をもとに柔軟な解決方法が模索されます。そのため、本件のように申立人の請求は認めないが、相手方に幾許かの金銭支払いを求めるという審判もあり得ます。
弁護士 森田茂夫
弁護士 吉田竜二