解雇や残業代等の問題について従業員との間で紛争が生じた場合、当事者間の協議で合意に至ればよいのですが、主張の対立が激しく、なかなか折り合いがつかないというケースでは、従業員が紛争を裁判所に持ち込むということがあります。
従業員が労働紛争を裁判所に持ち込む方法については、大きく、労働審判と訴訟とに分かれます。
労働審判
労働審判は迅速な労働紛争解決を目的に創設された制度であり、3回目までの期日の中で紛争解決を目指すものです。
労働審判では結論を至るまでの時間制限が設けられているため、迅速に審理を進めることができるよう様々な仕組みが採用されており、主だったものとして以下があります。
①初回期日は原則として申立てから40日以内に設定される。
②初回期日から具体的な審理に入れるよう、初回期日までに当事者双方が主たる主張・立証を終えておく。
③期日には当事者が出頭し、裁判官等から直接当事者に対する聴き取りが実施される。
④3回目の期日までに当事者間で合意が調わない場合には3回目の期日に裁判所が審判を下す。
会社側の対応
従業員から労働審判を申し立てられた場合の会社側の対応を①~④の観点から整理します。
①裁判所から労働審判手続申立書や証拠とともに「期日呼出状及び答弁書催告状」が届きます。
同書には、第1回労働審判期日が開催される日時や従業員の申立てに対する会社の主張を記載する答弁書の提出期限が記載されていますので、それらの内容を確認します。
答弁書の提出期限は期日の10日程度前とされることが多くなっています。
②初回期日が申立てから40日以内に設定され、答弁書の提出期限を期日の10日前とすると、会社の準備期間は2~3週間程度です。
答弁書に基本的な反論事項はすべて盛り込んでおく必要があるため、申立書に記載された内容を把握している従業員に対する事実確認や会社側の主張を根拠づける証拠の収集を早急に行い、答弁書の形に落とし込む必要があります。
③答弁書作成と並行して期日に参加する人物の選定を行います。裁判所からは当時の具体的な状況に関する質問がされるため、申立書や答弁書の記載内容を実際に経験している従業員の参加は必須です。そのような人物が用意できないとなると裁判所は期日に参加している申立人の主張を前提に判断を行う可能性がありますので注意が必要です。また、期日では労働紛争の解決条件についての意見や決断を求められることがあるため、決裁権限を有する人物に連絡が取れる状況にしておくことが好ましいです。
④当事者双方に対する聴き取りを終えた段階で裁判所からある程度の心証(労働紛争の結論をどのように考えるか)が開示されることがままあります。開示された心証が会社にとって有利なものか不利なものかで話し合いでの解決とするのか審判を下してもらうかの方向性を定めます。裁判所が下す審判には双方が異議を述べることができ、異議が述べられた場合には訴訟に移行するため、訴訟になった場合の帰結を踏まえて方向性を検討する必要があります。
まとめ
ここまで従業員が労働紛争を裁判所に持ち込んだ場合の対応について解説してきました。
従業員が選択する手続により会社側の対応が異なる部分がありますので、従業員がいずれの手続を選択したかを裁判所から送付される書類から適切に読み取る必要があります。
裁判所の手続においては、関係者から聞き取った事実関係をもとに自身の主張を正確に書面に落とし込むという作業が必要となりますが、それを期日までに短時間で行うことは容易ではありません。
手続を弁護士に依頼し期日までに万全の準備をしようとする場合、裁判所から書面が届いたタイミングで弁護士の選定を始めるくらいのスピード感が要求されます。
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所では会社側の労働紛争の経験豊富な弁護士が多数在籍しております。
会社にとってベストな解決方法を一緒に考えていきますので、従業員との労働紛争でお悩みの場合には是非一度ご相談ください。
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