紛争の内容
退職予定の従業員の顧客ユーザーの新車保証延長プランの中途解約金着服疑惑

交渉の経過
1 私傷病休職中の、従業員から復職の連絡。
2 新車保証延長契約の引受会社から、自動車所有名義人の同契約の中途解約返戻金の振込指定口座が、同名義人以外の、個人名の指定が複数あるので、調査すべきとの連絡。
  他の会社において、着服事例が認められたとのこと。
3 同個人名は、顧客の営業担当の本件相手方と判明。
4 依頼者は、同引き受け会社より、解約手続き書類、振込口座指定書類の写しを得た。
5 解約返戻金は、数万~十数万円であり、顧客ユーザーは、経済的に余裕がある方のため、入金がなくても、関心がない可能性が大。すでに、2年以上経過しているため、依頼会社として、どのように説明するか(使用者責任として賠償。従業員に求償請求)
6 当該従業員は、業務上のトラブルが多く、決して、優秀な、品行方正な従業員ではない。
7 社内調査中であり、他方、本事例の発覚により、解雇、退職勧奨の可否を検討していたところ、同従業員から退職の申出あり。
8 退職手続のため、出社するのに合わせて、事実確認をする打合せに同席を求められる。
9 手続き書類の作成、自身の口座への振込指定を認めるが、各振込金は、すべて顧客に交付済みと説明。
10 懇意の顧客に問い合わせたところ、確かに入金(受領)されていることの確認が取れる。
11 解約返戻金の振込先を、担当営業にすることの不自然さを説明し、顧客ユーザーから求められたことによる対応の相談も、その後の上司への報告がなかったことを指摘し、不明朗な取引(手続)であり、退職手続き時に確認したことを説明。

本事例の結末
解約手続き書類の不明朗(そして、その指摘が引き受け会社からなされたため)から、従業員の着服が疑われた。疑惑が晴れたこと、退職の申出があり、杞憂に終わった。

本事例に学ぶこと
契約名義人以外の人物(特に、担当セールスなど)への振込指定は、マネーロンダリングの危険、詐欺・横領などの犯罪行為に該当する恐れがあり、コンプライアンス上の問題、顧客の信頼を失墜しかねない。誤解を招かない対応の徹底。

弁護士 榎本 誉