紛争の内容
 元従業員は営業職であったところ、複数の取引において、架空の費用を計上したり、必要な費用を計上しなかったりして、受発注の金額を操作し、取引先の便宜を図っていました。
 そのため、会社は「業務命令に従わなかった」、「会社に損害を与えた」等といった就業規則上の懲戒事由に該当するとして、懲戒解雇処分としました。
 その後、元従業員は会社に対して、解雇無効及びそれに基づく解雇期間中の賃金支払いを求めてきましたが、解雇有効との会社側の主張と折り合いがつかず、労働審判が申し立てられました。

交渉・調停・訴訟などの経過
 会社側の代理人として対応しました。
労働審判において、会社側からは、具体的な事情を示して、元従業員の行った行為が懲戒解雇相当であることや適正な手続きに則って処分を決定したことを主張しました。
この主張が一定程度裁判所に受け入れられ、裁判所より、多少の解決金を支払った上での和解を打診されました。

本事例の結末
 本件は、労働審判の時点で解雇から半年以上の月日が経過していたため、元従業員の主張が全面的に通るのであれば、相当程度の金額の支払義務が生じる事案でした。
しかしながら、本件では、最終的に元従業員の主張額の3割程度の金額で和解するに至りました。

本事例に学ぶこと
 懲戒処分の有効性を判断する場合に、裁判所は「懲戒処分の重さの相当性」、「他の懲戒処分との均衡」、「適正手続」の3点を特に重要視します。
 また、労働法制および裁判所の運用は労働者保護の色合いが強く、会社側は厳しい判断にさらされます。
 したがって、会社が懲戒処分を行う際には、以上の3点を明確に説明できるよう、規則・制度・基準等を整え、慎重に慎重を期した上での判断を行い、かつ証拠となる資料を残しておくことが重要です。
 (元)従業員から懲戒処分を争われた場合、あるいは懲戒処分するにあたっての疑問点・不安点がございます場合には、是非一度弁護士までご相談ください。

弁護士 吉田 竜二
弁護士 木村 綾菜