紛争の内容
長年継続して勤務をしている従業員がいる、制度の移り変わりで厚生年金へ加入しなければならないこととなったが、当該従業員は手取りが少なくなるからといって厚生年金への加入を断固反対してきた、ところが当該従業員の退職間近になり、厚生年金に加入していないのは会社の不手際である、本来加入すべき時点で厚生年金に加入したのと同等の金銭給付等を求める、との主張をし始めたとのご相談でした。
厚生年金の未加入については基本的に会社の責任であるとされることが多いところですが、経緯に同情すべき点があったため、交渉事件の代理人として受任しました。
交渉・調停・訴訟などの経過
厚生年金への加入ができなかったことには従業員にも落ち度があるとして争うことも可能でしたが、会社として穏便に着地したいということでしたので、当該従業員の希望を確認するとともに、会社側でも仮に厚生年金に加入していた場合に想定される年金支給額やそれまでの厚生年金負担分等について計算を行いました。
従業員は年金支給額相当分に加えて慰謝料的な要素の支払いを求めていましたが、厚生年金未加入に至る経緯を主張することでその部分の請求は取り下げてもらいました。
本事例の結末
従業員と会社が妥結できる水準で年金相当分を支払う旨の和解が成立し、今後はそれ以外の金銭請求を行わないことの確認も行われました。
本事例に学ぶこと
会社として従業員に良かれと思って判断した事柄について、法律等に照らすと誤った処理をしていたということが事後的に判明することがあります。
その場合、最終的には会社に責任が認められることが多いのですが、従業員の対応によっては過失相殺的な処理がされることもありますので、判断をした当時に従業員がどのような主張をしていたかについては書面をもらうなどして証拠を残しておくことが重要かと思います。
弁護士 吉田竜二