事案の内容
依頼者である会社は運送会社であり、労働者であるドライバーの勤務管理をきちんと行っていました。しかし当該会社を退職した元従業員から、未払残業代請求をされるに至りました。会社としてもどのように対応すれば良いのか分からず、弁護士に相談するためご依頼いただくことになりました。

事案の経過(交渉・調停・訴訟など)
まずは、元従業員側弁護士に対し、客観的な記録をできるだけ開示しました。ここで開示をしないと、裁判所での手続になった際に裁判所の心証が悪くはたらくおそれがあります。また、どちらにせよ開示することになるのであれば、早期に開示した方が、事件の早期解決に繋がります。
会社から事情を聞くと、勤務管理については一部を除いて問題はありませんでした。しかし、就業規則の定め方、改訂の仕方、労働者雇用契約締結時の説明方法に問題があり、会社が支払ってきた残業代の計算方法には疑義がありました。
労働時間の算定については、一部を除いて双方とも争いがなく、問題は就業規則つまり労働条件の解釈の問題となりました。そこで、法律的解釈の問題を中心として交渉を重ねていきました。

本事例の結末
双方それぞれの考え方を基に交渉をした結果、両者の計算には大きな隔たりが生じてしまいました。そのため、このままでは交渉は決裂し、労働審判等の裁判所での手続に移行せざるを得ない状況となってしまいました。
しかし、交渉中に最高裁判例が出てしまい、本件事件と類似する点で、会社側に極めて不利となることが見込まれました。
そこで、(法的)根拠は置いておいて、金額のみという形で交渉を進めた結果、請求金額の半分という金額での和解をすることができました。

本事例に学ぶこと
会社側は、きちんと勤怠管理をしていても、就業規則などのルール設計に問題があり、そこを突かれてしまうと残業代の支払義務から免れないことになってしまいます。自社の運用に自信があってもなくても、残業代請求をされた際には、弁護士に相談することを強くお薦めいたします。

弁護士平栗丈嗣