紛争の内容
依頼社は、辞めた従業員から多額の残業代請求をされてしまいました。もっとも請求金額が大きすぎるため、全額を支払ったのでは会社を倒産させる必要がありました。また、そもそも請求金額の妥当性も疑問な事案でした。
交渉・調停・訴訟等の経過
まずは、労働時間を根拠付ける資料を相手方弁護士に全て開示するとともに、当方でも資料を基に計算してみました。残念ながら、会社が計算していた方法には誤りがあり、相当な金額の残業代を支払う必要が出てきました。
もっとも、残業代の計算方法にあたり、様々な要素で争点があり、何をどこまで争うべきか・認められる見込みがあるのか検討していき、裁判になった際の見立てを複数のシナリオで検討しました。その結果、もっともこちらに有利と考えられる金額でようやく支払可能な金額ギリギリであることが判明しました。仮に、従業員側の主張が全て認められてしまった場合には、会社は倒産する必要が出てきてしまいました。
このような状況下で、1年近く訴訟を続けることは、会社経営にあたっての経営者への心的ストレスがあまりにも大きく、早期解決を図る必要性がありました。
本事例の結末
相手方弁護士に対し、会社の財政状況・経営成績・今後の見通しを伝えた上で、交渉を重ねて行きました。始めは先方は強気でしたが、本当に破産の危険があることをようやく理解してもらうことができ、一定の和解金を支払うことでのスピード解決を図ることができました。
本事例に学ぶこと
法的紛争において、法律論や事実認定の点で正面からぶつかることが原則です。しかし、そのような正論ばかり振りかざしていているのでは、当事者間の真の利益に繋がらない場合が多数あります。本件は、会社の経営にまで踏み込み、早期解決のために何ができるのか、それが請求する相手方にも納得いくものであるのか、熟考の上で交渉のみで事件を終了させることができた事例となりました。
弁護士 平栗 丈嗣