メンタルヘルス(精神的な不調)が見受けられる従業に対しては会社としてどのような対応をとるべきでしょうか。

1 会社側が行うべき措置

⑴ メンタルヘルスが見受けられる従業員の早期発見

まず、できる限り早期に会社がそのようなメンタルヘルスの見受けられる従業員を発見できことが大切です。メンタルヘルス発見のきっかけの一つは、やはり定期的な健康診断です。もっとも、それだけでなく、日常的な異変が見られないか、現場の状況について、常に気を配っておくことも大切です。

⑵ 医師等の意見聴取

会社は、健康診断の結果に基づき、労働者の健康を保持するため、必要な措置について医師等の意見を聴取する義務があります(労働安全衛生法66条の4)。

⑶ 必要に応じて就業場所や業務内容の変更等

必要があるときは、就業場所を変更したり、業務内容を転換したりする等、適切な措置を講じる義務があります(労働安全衛生法66条の5)。

⑷ 私傷病休職制度の利用

ア 概要

仮に、メンタルヘルスが理由ですでに勤怠不良の状態になっていたとしても、直ちに解雇することはできません。

そこで利用を検討すべきは、私傷病休職制度です。業務外の病気や精神疾患等による欠勤が一定の期間(3~6ヶ月が多いです)になった場合に命じるものです。

この制度を利用し、万が一病気や精神疾患が回復(治癒)しなければ、会社から自然退職又は解雇されることになります。そのため、労働が不能な労働者についての解雇を一定期間猶予する制度とも言われています。

イ 利用の条件

では、どのような場合に私傷病休職を発令できるのでしょうか。

まず私傷病休職の発令のためには、就業規則に規定して、労働契約の内容にしておくことが必要になります。

また、利用にあたっては、診断書の提出を求めることが必要です。

場合によっては、当該従業員の同意を得た上で人事担当者が主治医と面談することも検討すべきです。

その上で、通院期間や頻度、回復の見通し、今後の就労の見通しなどを確認・検討した上で、社内の人事課と直属の上司等で協議し、私傷病休職を発令するかどうか判断すべきです。

ウ 復職について

私傷病休職の従業員が復職を希望する場合も慎重な判断が必要です。

診断書の提出を求めるだけではなく、主治医との面談も望ましいです。

さらに、産業医など、会社が指定した医師の判断を仰ぐことも重要です。

以上のとおり、基本的には会社の業務内容を把握し、復職が可能かどうかを判断できる専門家の意見を踏まえて判断を行うべきです。

2 メンタルヘルスが見受けられる従業員対応を誤った場合の会社のリスク

安全配慮義務違反

近年、メンタルヘルスによる従業員の勤怠不良等の問題は、増加傾向にあります。

会社は、そうした従業員を漫然と放置してはなりません。

なぜなら、会社には、労働者の健康状態を把握して、労働者の健康を保持するための適切な措置をとるという安全配慮義務があるからです。

そのため、こうした義務を怠り、従業員のメンタルヘルス悪化を招いてしまった場合、会社の安全配慮義務違反として、会社が損害賠償責任を負う可能性があります(民法415条)。

メンタルヘルスが見受けられる従業員への対応を誤り、その症状が悪化してしまった場合、最悪のケースでは、自殺などによって命を落としてしまうというケースもあります。

そのこと自体が会社にとって大変大きな損失であることは言うまでもありません。

その上、会社が多大な賠償責任を負ったり、企業のイメージが大きく低下してしまったりすることも考えられ、会社の存続すら危機的になることも少なくありません。

3 メンタルヘルスが見受けられる従業員対応は弁護士に相談

⑴ 事前予防のための弁護士利用

メンタルヘルスは未然に防ぐための体制作りがまず大切です。

日ごろから、弁護士に気軽に相談できるという環境があれば、リスクを避け、適正な労働安全管理を行うことが可能になってきます。

そこで、労働事件を多く扱っている、あるいは労働事件の専門弁護士のいる法律事務所と顧問契約を結んでおくことが事前の予防策には有効です。

⑵ メンタルヘルスを理由に紛争となった場合は弁護士のサポートが不可欠

労働者から訴えられている場合は、早期対応が必須ですので、すぐに専門の弁護士への対応が必要です。

すぐにご相談することはもちろん、日ごろからすぐに弁護士に相談できる環境作りとして、顧問契約をしておくことをお勧めします。

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