会社がしてはいけないことは少なくありませんが、知らなければつい行ってしまうこともあります。このコラムでは、会社がしてはいけないことを個別にご紹介し、併せて、してしまった場合のリスクや会社がとれる対策について解説します。

1 会社がしてはいけないこと

会社が日々行うことの中には、会社にリスクを発生させてしまうことが潜んでいます。
それらのリスクの中には、会社に経済的な不利益だけでなく、社会信用上の不利益などを生じさせるものもあります。
このコラムでは、会社がしてはいけないことをご紹介し、リスクの回避方法についても具体例を交えて解説していきます。

2 安全配慮義務に違反する

(1)安全配慮義務とは?

会社と従業員(労働者)は、雇用契約を締結していることが通常です。
会社は、契約に基づく義務のひとつとして、従業員に対して、安全配慮義務を負うことになります。
安全配慮義務とは、会社が労働者の生命・身体の安全を確保しながら労働させる義務のことです。
従業員が労働する中で、労働に伴うリスクというものはどの業種・職種でも少なからず存在します。
安全配慮義務とは、そのようなリスクから従業員を守る義務と言って良いでしょう。

(2)安全配慮義務違反が問題になり得るケースと対策

安全配慮義務が問題になり得るのは、およそ全ての職種・業種と言って良いでしょう。
例えば、現場での作業を伴う職種の場合、会社としては、従業員の生命・身体を守るために、想定される危険に対する対策を講じておく必要があります。安全器具を装着するよう指示を徹底する、安全確保の措置の徹底を指導する等の措置を講じる必要があります。
安全配慮義務違反があったか否かは、会社がするべきことをしていたかどうかということになりますので、業界の慣行や他の企業が行っていた安全措置なども参照して、対策を講じる必要があるでしょう。

現場作業を伴わない職種であっても、安全配慮義務は当然問題になります。
例えば、デスクワークがメインの職種であっても、多くの残業が原因で従業員が体調を崩した場合、会社が安全配慮義務違反を問われる可能性があります。
法的に適切な手続きを踏めば、従業員に残業を行わせることはできますが、残業の量があまりにも多く、それが原因で従業員の健康に支障が生じれば、会社の責任が問題になり得るのです。
そのようなことを避けるためには、会社としては、従業員の労働時間を正確に管理し、労働時間が特に多くなっている従業員については、業務量を減らす等の措置を講じる必要があるでしょう。

3 従業員を簡単に解雇する

(1)解雇について

従業員の勤務態度や勤務成績が不良であったり、何か問題を起こしたりした場合、会社としては当該従業員を解雇することを考えることもあるでしょう。
しかし、有効に解雇を行うためには、厳しい要件を満たす必要があります。

解雇には大きく分けて、①普通解雇、②懲戒解雇、③整理解雇という3つのタイプがあります。
いずれのタイプでも、解雇が適法かつ有効になるためには高いハードルを越える必要がありますので、注意が必要です。

(2)従業員を解雇することによるリスクと対策

ア 普通解雇について

普通解雇の場合、解雇に客観的に合理的な理由があり、解雇が社会通念上相当と認められる必要があります。
通常、就業規則に解雇事由が規定されていることが多いですが、解雇事由があっただけで有効に解雇をすることは困難です。
解雇事由があった上で、当該事由の内容や解雇するまでに会社が従業員にどのような対応を行ったかというようなことなどが考慮されて解雇の有効性が判断されることになります。

イ 懲戒解雇について

懲戒解雇も基本的に普通解雇と同様の要件を満たす必要があります。
特に、懲戒解雇を行う場合には、就業規則(懲戒規定)に懲戒解雇ができる旨と懲戒解雇の事由が明記されている必要があります。
その上で、懲戒解雇の事由があることを前提に、懲戒解雇に至る経緯等を考慮して解雇の有効性が判断されます。

ウ 整理解雇について

整理解雇とは、会社側の都合のみを原因として行われる解雇です。
実際に多いのは、会社の経営難や業績不振から人件費を削減する必要があるということで従業員を解雇するというケースです。

整理解雇の有効性は、①人員削減の必要性、②代替手段の履行の有無、③人選の合理性、④手続の妥当性、という事情を考慮して判断されます。
②については、特に、退職希望者の募集等の手段を取ったかどうかが考慮されます。

エ 解雇を有効にするために

このように、解雇が有効になるためには、いずれのタイプの解雇であっても、厳しい要件を満たす必要がありますので、解雇は最終手段とし、どうしても辞めてもらいたい従業員がいる場合はできるだけ話し合いで円満に解決することが望ましいです。

4 残業代を支払わない

(1)残業代の未払いとは?

昨今は、働き方改革の風潮が広まり、長時間の残業が行われる企業は少なくなってきているかと思います。
しかし、残念ながら、今でも残業代の未払いが問題になることは少なくありません。
裁判等にまでなっているものはごく一部であり、残業代の未払いは身近な問題と言っていいでしょう。

(2)残業代の未払いが持つリスクと対策

残業代の未払いがあり、従業員から訴訟を起こされた場合、未払残業代の支払を命じる判決が出されることがありますし、場合によっては付加金(最大で未払残業代と同額)の支払を命じる判決が出されることもあります。
このような結果は、会社にとって経済的に負担となるばかりでなく、様々なデメリットをもたらします、
例えば、残業代を支払わないということが世間に知られることで会社のイメージが低下してしまうおそれがあります。

また、残業代が発生するということは、従業員の労働時間が長いということですが、労働時間が長くなると、従業員の業務効率は低下し、場合によっては従業員の健康状態が悪化することにもなってしまいます(会社の安全配慮義務違反が問題となってしまうこともあります)。

このように、残業代の未払いには、会社にとって無視できないリスクがありますので、できる限り残業代の未払いが生じないようにすることが大切です。
従業員の労働時間管理をしっかりと行い、もし、残業代未払の申出があった場合には、速やかに対応する必要があります。

5 まとめ

このコラムでは、会社がしてはいけないことの中でも代表的なものをご紹介しました。
これら以外にも、日常的に行っているけれども実は会社にリスクを起こす可能性のあることは意外とありますので、お困りのことがありましたら、まずは弁護士にご相談ください

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 権田 健一郎
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