近年、成人年齢が18歳に引き下げられるなど、未成年者に関係する各種法改正なども活発に行われております。

また、未成年者を雇用している企業も、数多くあろうかと思います。

しかし、未成年者には、労働基準法などにより、成年者とは異なる法規制なども特別に規定されています。

そこで、そのような未成年者に対する労働法の規制など、使用者(経営者)が未成年者を雇用する上で注意すべき点について以下解説していきたいと思います。

未成年者とは

労働基準法の定義

未成年者は、労働基準法上は、以下のように「年少者」と「児童」の2つに分類されています。

なお、未成年者は、令和4年4月1日以降は満18歳未満となっています。

「年少者」

満18歳未満の者をさします。

原則として、雇用できますが、成人とは異なる様々な法規制がされています。

「児童」

満15歳に達した日以後最初の3月31日が終了するまでの者をさします。

原則として雇用することはできません。

例外的に、映画や演劇(子役など)に限り、監督署長の使用許可を得た上で雇用できる場合があります。

使用者として注意すべき点

年少者の証明書を備える

使用者は、事業場に、年少者の年齢を証明する書面(「住民票記載事項証明書」でよい)を備え付けなければなりません」(労働基準法第57条)。

そのため、雇用する未成年者に対し、必ず年齢を証明できる証明書の提出を求める必要があります。

違反した場合は、30万円以下の罰金となる可能性があります。

また、未成年者の通う学校によっては、アルバイト原則禁止・必要な場合のみ事前許可が必要という場合もあります。

そのため、法的な義務ではありませんが、トラブルを未然に防止する観点から、学校の許可証などを提出してもらうと良いかもしれません。

契約は未成年者本人と行う必要がある

労働契約は、未成年者本人が結ばなければならず、親権者や後見人が代わって締結してはいけないとされています(労働基準法58条)。

賃金も同様に本人へ支払うことになります。

これは、未成年者本人が望まない労働を強制させられたり、経済的に搾取されることを防ぎ、未成年者を保護する観点からのものです。

これに違反すると、30万円以下の罰金を科されるおそれがあります。

ただし、未成年者が本人にとって不利益な雇用契約を締結させられてしまった場合には、親権者や後見人は、未成年者に代わって契約を将来に向かって解除することができます。

変形労働時間制の原則禁止

年少者には、原則として、いわゆる変形労働時間制により労働させることはできません。

変形労働時間制とは、一定期間内の総労働時間を超えない範囲であれば、特定の日(週)に法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えてもよいとする制度です。

未成年者にはこの制度が使えないということです。

罰則には6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が規定されています。

ただし例外として、満18歳未満の年少者については、以下①②は良いとされています。

(労働基準法60条)

① 1週間の労働時間が40時間を超えない範囲内で、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合において、他の日の労働時間を10時間まで延長すること

② 1週間48時間、1日8時間を超えない範囲内において、1か月又は1年単位の変形労働時間制を適用して労働させること

残業や休日労働の禁止

年少者には、残業や休日労働をさせてはいけません。

仮に、年少者の合意があったとしても、残業・休日労働をさせることはできません。

未熟な年少者を、過酷な労働から保護するためです。

成年の場合は、あらかじめ労使間で時間外労働について合意する、いわゆる“36協定”がありますが(労働基準法第36条)、年少者の場合には、これもできません。

違反した場合、6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金の可能性があります。

ただし、非常災害時の業務や、農林水産業に従事する年少者については、残業・休日労働が認められる場合もあります。

深夜業の禁止

非常災害時の業務や、農林水産業を除き、原則として、午後10時から翌日午前5時までの労働(深夜労働)は禁止されます(労働基準法第61条)。

深夜労働は、年少者の健全な育成に良くないためです。

罰則は6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が規定されています。

危険有害業務の就業制限

次のような危険又は有害な業務については、就業が制限又は禁止されています。

(労働基準法62条、63条)

例えば、以下のようなものです。

・運転中の機械・動力電動装置の危険な部分の掃除や検査

・ベルト・ロープの取付けや取外し

・クレーンの運転

・毒劇薬・毒劇物等を取扱う業務

・特殊の遊興的接客業(バー、キャバレー、クラブ等)における業務

・重量物を取扱う業務

・足場の組立等の業務

・坑内における労働 など

違反した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となる可能性があります。

雇入れ時の安全衛生教育

雇入れの際に、仕事に必要な安全衛生教育を行わなければなりません。

労働災害補償

業務上の事由又は通勤による災害については、アルバイト等であっても、労災保険による災害補償が行われることになっています。

帰郷旅費の負担

年少者を解雇し、解雇の日から14日以内に年少者が帰郷する場合、使用者は必要な旅費を負担しなければなりません。

ただし、年少者がその責めに帰すべき理由で解雇され、使用者がその事由について労働基準監督署長の認定を受けた場合は、旅費を負担する必要はありません。

まとめ

これまで見てきたように、未成年者の雇用には様々な制約があり、しかもその違反には罰則が規定されています。違反の程度によっては、厚生労働省によって企業名を公表されるケースもあり得ます。

そのため、18歳未満の年少者を雇用する場合には、労働基準法などで規定されている年少者の保護規定の内容を踏まえて、労働条件などを慎重に決めていかなければなりません。

労働基準法の規定を十分に把握したうえで行う必要があります。「知らなかった」では済まされません。

使用者として、未成年者を雇用するに際しては、細心の注意が必要です。

弁護士などの専門家に確認、相談することも重要になってきます。


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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 小野塚 直毅

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